デーア・ローアー Dea Loher


©Alexander Paul Englert

「書くということは、関係を、説明や仮説を探し求める行為です。時には失われた真実を求めて。

けれども、この行為が価値あるものとなるのは、現実から飛び立ち、言葉のなかにだけあるような空間を開け放つときです。

この空間が私たちの現実を押し広げてくれます。「開かれた想起」とでもいいましょうか

――前へ、未来へ向かって構想していくような想起。過去を源として現在をフィールドとして。

書くことは、人間が共に生きていくことの探求と構想なのです。」

 (デーア・ローアー 2006 年ブレヒト賞受賞の際のコメント)

 

デーア・ローアー(Dea Loher)
1964年バイエルン州生まれ。ベルリン芸術大学で上演台本を書き始め、92年『オルガの部屋』でデビュー。次作の『タトゥー』(92年)、『リバイアサン』(93年)では、演劇専門誌テアター・ホイテの年間最優秀新人劇作家に選ばれる。ミュールハイム市演劇祭では、93年ゲーテ賞(『タトゥー』)と98年劇作家賞(『アダム・ガイスト』)、2006年ブレヒト賞受賞。残酷と滑稽、グロテスクとユーモアが交錯する人間のありようを見据える目線、現代詩のようにミニマルでリズミカルな語りでイメージを掻き立てる独特の劇的言語は、世界的にも評価が高い。2008年『最後の炎』で再びのミュールハイム市劇作家賞、テアター・ホイテ誌年間最優秀劇作家に。2009年ベルリン文学賞他、演劇・文学分野での受賞多数。2010年『泥棒たち』はベルリン演劇祭招待作品。2017年ヨーゼフ・ブライトバッハ賞受賞。

 

日本での上演作品

『タトゥー』
1992年、ベルリン初演
*2009 年、日本初演→新国立劇場、岡田利規演出
*2017年、ドイツ文化センター「ドイツ同時代演劇リーディング」エレベーター企画・外輪能隆演出
*2017年、近畿大学、幸田美帆子演出
■2006年、論創社より『タトゥー』(三輪玲子訳)出版

どこにでもある普通の平穏な家庭。その温かい家庭の体面を保ちたいという願いの陰で行なわれる父の蛮行。父との性的関係を受け入れざるを得なかった姉アニータは、花屋の店員バウルと出会ったことで、諦めかけていた未来への希望、父の刻印を拭い去る可能性を見出すのだが……。劇作家ローアーの出世作。

 

『無実』
2003年、ハンブルク、アンドレアス・クリーゲンブルク演出で初演
2011 年、ベルリン、ミヒャエル・タールハイマー演出で再演
*2011 年、リーディング上演、劇団黒テント、佐藤康演出
*2014年、日本初演→東京演劇アンサンブル、公家義徳演出
■2010年、論創社より『無実/最後の炎』(三輪玲子訳/新野守広訳)出版

海岸から波間に消えていく女を目撃した不法入国者の二人。彼らに舞い込む「金(神)の入った袋」。盲目の踊り子との出会いを軸に拡がる、人間の「罪」をめぐる壮大な物語。

 

『言葉のない世界』
2007年、ミュンヘン、アンドレアス・クリーゲンブルク演出で初演
*2011 年 ITIドラマリーディング 阿部剛史訳 小山ゆうな演出

ローアー本人のアフガニスタンにおける体験を、一人の女性画家の視点で描く。戦場となったアフガニスタンの惨状を目の前にして、アーティストには何が可能なのかを自問する作品。ここで言葉にされた〝痛み〟という感覚は、『最後の炎』で具体化されている。

 

『最後の炎』
2008年、ハンブルク、アンドレアス・クリーゲンブルク演出で初演
*2009 年、リーディング上演、新国立劇場、森新太郎演出
*2011 年、日本初演→エイチエムピー・シアターカンパニー、笠井友仁演出
*2012 年、テラ・アーツ・ファクトリー、林英樹演出
★2018年4月文学座にて、生田みゆき演出による再演も決まっている。
■2010年、論創社より『無実/最後の炎』(三輪玲子訳/新野守広訳)出版

海外派兵から帰国した男が目撃した交通事故。その子供の死をきっかけに、事故にかかわるいくつもの物語は起こり、やがて絡み合う。家を出た主人公が迎える結末は、世界の一片をスリリングに象徴する。

 

『黒い湖のほとりで』
2012年、ベルリン・ドイツ座、アンドレアス・クリーゲンブルク演出で初演
*2015年、日本初演→エレベーター企画、外輪能隆演出
■2015年、論創社より『泥棒たち/黒い湖のほとりで』(三輪玲子訳/村瀬訳民子訳)出版

「愛は死 死は愛」と遺書を残して死んだ我が子。残された親たちは、事件の記憶に圧倒されながらも、懸命に過去を振り返り、子どもたちの心を探る。極限的なまでに美しく凝縮された言語世界に誘われて、誰しも日常に潜むぼんやりとした不安に向き合わざるをえない。

 

『泥棒たち』
2010年、ベルリン・ドイツ座、アンドレアス・クリーゲンブルク演出で初演
*2017年、日本初演→東京演劇アンサンブル、公家義徳演出
■2015年、論創社より『泥棒たち/黒い湖のほとりで』(三輪玲子訳/村瀬訳民子訳)出版