劇団代表からのごあいさつ  2007年1月1日

これからの東京演劇アンサンブル あたらしい代表が決まりました

 ゆっくりとした劇団内部での話し合いのなかで、広渡常敏の死去のあと劇団代表を二人で進めることにしました。入江洋佑・志賀澤子は劇団の53年の歴史のほとんどの芝居に俳優として出演しながら、ブレヒトの芝居小屋に拠点をかまえ、広渡の演劇論が実現される過程のなかでの劇団の分裂後、実験的小劇場公演、海外公演なども実現し、演出、創作などの仕事を広渡とともに担ってきました。


 練馬の大根畠の一隅にブレヒトの芝居小屋が建った。痛快な稽古場だった。そして東京のどの劇場を探しても見当たらない、オープン・スペースの劇場を僕らは自分のものにした。多少の脱落者が出たがぼくらはかえりみないことにした。後にひけないことが人間にはあるのだ。(広渡常敏1986年)


 広渡の仕事は集団創作『明日を紡ぐ娘たち』からはじまる労働者の創造性、永遠の変革への信頼を軸に、ブレヒトの叙事詩的演劇に共感し、人間の知性を求め、創作劇、内外の近代劇の新演出などの上演のなかで、時代と対峙する、俳優の生き方、存在を問い続けてきました。広渡の50余年の劇団づくりの中で育てられ、結集している俳優の集団の可能性が、これからのTEEの新しい芝居を創り出すでしょう。後にひけないことが人間にはある。その意味が今一人ひとりに実感されています。


 時代は自身の国家の内部での差別や格差、貧しいものと富めるものとのたたかいの必然をあらためて示しています。世界の秩序を護るためと戦争がしかけられ、力あるものの正義が、それに反対するものを断罪している時代です。日本では教育基本法の改悪が、決まり、次は憲法第9条。私たちは夜の闇がどのように深くなっていくのか、ただ見送っているだけではないかという焦りにかられています。


 演劇が人間の愛と優しさへの追求を根源にもつ、人間の未来にとっていまこそかけがえのない価値を発揮する芸術であることを自覚して、私たちは"希望"を実現することを粘り強く続けます。


 2006年まず本公演2本をえらびました。そして全国での一般、学生、子供たちに約10作品の芝居を届ける忙しい1年を過ごします。


 みなさんの励ましに応えひとつひとつの芝居を大切に創っていきます。これからもよろしくお願いします。


東京演劇アンサンブル代表
入江洋佑
志賀澤子