劇団紹介

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 チェーホフ「かもめ」の上演

東京演劇アンサンブルとは

 1954年創立以来東京演劇アンサンブルは、「演劇行為の中に人間の変化の契機をつくる」ことを根底においた創造の集団をめざしてきた。張りめぐらされた古い構造を破壊して、新しい演劇空間を、今日の絶望的な状況のなかに生み出そうとしつづけている。

ブレヒトの芝居小屋を根拠地として

 1977年、東京練馬区・武蔵関の辺境に on the corner をこころざして劇場を建設した。オープンスペース、ブラックボックス、客席数可変の前衛的な劇場である。このブレヒトの芝居小屋を根拠地に、演出家・広渡常敏を中心とした約70名の劇団員が、常にアクチュアルな演劇を求めつづけ、時代と世界に向きあった活動を、年間250〜300ステージの規模で展開している。

多彩な海外交流公演

 1990年〜91年、ニューヨークとソウルでの『桜の森の満開の下』を皮切りに、1993年、モスクワ芸術座で『かもめ』を上演。円形劇場の周囲を流れる川、自然主義を超えた象徴的な演技のスタイルは、チェーホフの本場ロシアにおいて強烈な衝撃をあたえた。1996年、日本を代表する木下順二の現代劇『沖縄』のベトナム・イタリア公演。1999年、再び『桜の森の満開の下』でウラン・ウデ(ロシア連邦ブリヤート共和国)、ロンドン公演、2005年アイルランド3都市(ベルファースト・ダブリン・コーク)公演を成功させた。また、2003年に『走れメロス』、2005年に『銀河鉄道の夜』の韓国公演を行なった。
実績詳細については、こちらを。

国内での公演活動

 世界の前衛作家や、日本・世界の文芸作品の脚色・上演を実験的に試みている。  若い世代とあらためて今世紀におけるブレヒトの歩みを辿ろうという企画「ブレヒト生誕百年記念連続公演」を、1998年から2003年にかけて上演。  2007年は劇団前代表で演出家であった広渡常敏の追悼公演として、『明日を紡ぐ娘たち』と『母―おふくろ』を上演した。  入江洋佑、志賀澤子、松下重人、公家義徳らが演出し、作品創造を続けている。 

  21世紀の初頭にあたって、東京演劇アンサンブルは人間の精神に問いかける演劇運動を展開しつづける。 演劇が物語を語る道具ではなく、目的のための思想の伝達手段でもないことは、20世紀の演劇をつうじて確かめられたことであると、我々は考えている。演劇は、作品をつくる過程のなかにこそ生まれる。作品行為こそ、人間の精神に揺さぶりをかけ、時代状況に切り込める。それは俳優が劇場の舞台に立ったとき観客とともに生み出すものである。そのような「瞬間」に生きる「俳優」に賭ける舞台は、まさに20世紀の日本の新劇運動の歩みを最も創造的に継続するものだ。日本の演劇が、伝統演劇から現代演劇まで、ますます多様化しているなか、広渡常敏と東京演劇アンサンブルの仕事の個性は、際だった道を辿っている。商業主義の蔓延した日本の演劇界の流れのなかで、ひたすら自身の求めた演劇の理想を追求することが、多くの観客に支持され、劇団内部の活力の源泉ともなっていくことを創立以来実践し続けている。 21世紀、東京演劇アンサンブルが中心に据える仕事は、既に前世紀のものとして捨てられようとしている“革命”の精神をとらえ直すことである。変革への憧れと自身への戦いなしに人間はない。演劇の言葉が革命を語るのではなく、「言葉を語ることとその言葉を受け取る瞬間が革命そのものであるような演劇」が、本当に自由な人間の精神をつくりだし、人間が生きる状況をつくりだす。世界を動かすエネルギーとなるような演劇を、広渡常敏と東京演劇アンサンブルは求め続ける。