原口久美子(はらぐち くみこ)

  『コーカサスの白墨の輪』舞台より

NHKアクターズゼミナールを経て、1990年東京演劇アンサンブル入団。

『幻燈辻馬車』眉輪、『沖縄』山野けい役など、芝居の芯になる役者としてその力を伸ばしてきた。
 『コーカサスの白墨の輪』のグルシェ役として抜擢され、2年間全国公演を行った。音楽大学出の音感の良さと美声で林光のソングの数々を歌い、ブレヒトの描いたアナーキズムの空間で断固生きる女性が好評だった。2001年の再演では、彼女の成長が際立っていた。
 『赦せない行為』では浅井との二人芝居で、弟と世間を気遣う姉の微妙な心境を演じた。『おんにょろ盛衰記』では老婆役で、入江洋佑との名コンビぶりを発揮している。ストーリーをぶち破る突き抜けた婆さんが、非常に印象深い。女らしい役の多かった原口が初の少年役に挑戦したのが『ゲド戦記』。ゲドと対照的な現実主義の敵役をキリッと演じ、好評だった。また、『エレベーターの鍵』では初のひとり芝居に挑戦。男社会のなか、ポツンとひとり城に閉じこめられ、徐々に体の自由を奪われていく女の役を、鬼気迫る美しさで演じた。『ワーニャ伯父さん』ではソーニャを演じた。エレーナとは対照的に、現実を見据えて生きる彼女が、アーストロフへの想いを自らもぎとってできた空虚を抱えつつ、ラストシーンでワーニャを支える。しっかりものでありかわいらしく、しかし報われないソーニャの清らかさと強さが、非常に印象的だった。『林檎園日記』では志津子を演じた。知的で一途な彼女の想いが信胤の心を動かしていく。
 マリーナ・カーの日本初演作品『マイという女』では主演のマイを好演。校長の職を持ち自力で家も建てる現実的な力をもちながら、夫を待ち、とことん「愛」を求め続ける女という、これまでにない役柄に挑戦。繰り返される閉塞した状況の中で、絶望しながらも、男に期待を持ってしまう女・マイ。切なくも、美しく演じられた。

 2009年には『ブレヒトのアンティゴネ』にてアンティゴネ役を演じる。国家と個人の正義の狭間におかれ、正義を貫くことこそ人間の生きる価値であることを、自らの生命をかけて精神の自由を勝ち取ろうとする王女を好演。静かなエネルギーを感じさせる、原口の新たな一面が発見された。
 アンサンブルの中堅を担う、美しさと知性の溢れる女優である。

【主な舞台作品】

コーカサスの白墨の輪

B.ブレヒト

グルシェ

幻燈辻馬車

山田風太郎

眉輪

エレベーターの鍵

アゴタ・クリストフ

女(ひとり芝居)

沖縄

木下順二

山野けい

おんにょろ盛衰記

木下順二

老婆

赦せない行為

森本薫

真夏の夜の夢

W.シェイクスピア

パック

真実の学校

広渡常敏

夏子

肝っ玉おっ母とその子供たち

B.ブレヒト

百姓女

ガリレイの生涯

B.ブレヒト

カーニバルの歌い手

ゲド戦記

ル・グウィン

ヒスイ

風の又三郎

宮沢賢治

こども

銀河鉄道の夜

宮沢賢治

ターちゃん/女の子

食卓のない家

円地文子

沢木香苗

セーヌ川の身元不明の女

ホルヴァート

ルシーユ

消えた海賊

広渡常敏

レイチェル

ワーニャ伯父さん

A.チェーホフ

ソーニャ

林檎園日記

久保栄

志津子

マイという女

マリーナ・カー

マイ

桜の森の満開の下 坂口安吾
明日を紡ぐ娘たち 広渡常敏 静枝
母―おふくろ B.ブレヒト マーシャ
ブレヒトのアンティゴネ B.ブレヒト アンティゴネ