熊谷 宏平 (くまがい こうへい)

  『道路』舞台より

 東京演アンサンブル俳優教室27期を経て、1994年東京演劇アンサンブル入団。

 熊谷宏平、熊さんについて。熊さんと呼ばせてもらっている。彼の印象として僕が感じるのは二つ、役者の魅力と人間の魅力だ。役者として僕が知るところでは『セチュアンの善人』『母』『群蝶の木』が印象的である。セチュアンでは複数の役をこなしながら、それでいて作品に対しても個々の役柄に関しても深い考察を述べたことが思い出深い。母では学ぶ人々のまえまげがコミカルであった。忘れがたいのは群蝶の木のラストの台詞、「暗い墓の中で、潮に洗われて滑らかになった珊瑚の破片が、厨子甕の底で折り重なっている様子が目に浮かぶ。それだって立派な骨だと思った。」である。悲しい物語を全て洗い流す美しい台詞を爽やかに放った様は、舞台の上だけでない、彼の人間を感じさせる輝きがあった。今、『夜の空を翔ける』の稽古場で、或いはタタキの作業場で、彼は間違いなく、やはり夜の空を翔ける一人である。 (『夜の空を翔ける』公演パンフレットより by Toshiki Shinozawa)

 この男、管理人Aが、たぶん最も信頼する男。俳優としてとか、アーティストとしてとか、そういうことではなく、人間として、友人として、とても信頼している。
歳が近いということもあるのだと思うのだが…。
 東京演劇アンサンブルでは、毎年年末に次の年の運営委員を決める選挙をする。そして『消えた海賊』以来導入されている“偶然性”によって、2人ほど、くじ引きで無罪放免になるというおかしなシステムも続いている。そして年が明けて、運営委員同士の選挙によって運営委員長が選ばれる。昨年(2010年)は、彼が、東京演劇アンサンブルの運営委員長だった。熊谷宏平(愛称:クマ)である。
 タイトルに挙げたタイプとは、むしろ真逆にいるタイプ。まぁ、あえて言えば、短気で、損気で、わんぱく坊主。いやいや、わんぱく坊主なら、いいのだが、実は優等生でもある。そんな彼が、昨年末の納会でとても感動的なスピーチをした。それは、もう泣けるくらい。でも……しかし……、あまり内容をはっきりとは覚えていない。酔っていたせいだろう、うん。たぶん、とても真面目なことを言ったんだよなぁ、確か……。
 今回彼は、芝居の出だしで語り手として登場し、ラストでは狂人となって登場する。もちろん、同一人物という設定ではなく、複数の役をこなすということなのだが。モノの価値が変わり、もう生きること、食べることしかなくなってしまった未来。高速道路しかない未来で、彼は、“狂人”だと言われるのだが。しかし、この役、
実に、クマらしい。『道路』の上では、この上なく、狂人らしいのだ!! さて、手は明かすまい。
 どうか彼の狂人っぷりを見てほしい。最後に一つ小さな驚き。稽古をのぞいていたあるシーンで、衣裳をまとったクマが舞台に居るのだが、まったくわからなかった。全然ほかの人だと思っていた。むしろ、女性かとさえ思った。不思議だ。ぼくがクマを間違えるはずないのに。いったいそれが、どのシーンかも、観てほしいなぁ、と、こっそり思ったりしています…。

(『道路 La Route』劇団ブログ出演者紹介より)

【主な舞台作品】

走れメロス

太宰治

山賊

セチュアンの善人

ブレヒト

第三の神/警官

おんにょろ盛衰記

木下順二

村人

ゲド戦記ー影との戦い

ル・グウィン

銀河鉄道の夜

宮沢賢治

海鳴りの底から

堀田善衛

六蔵

コーカサスの白墨の輪

ブレヒト

シャウワ

風の又三郎

宮沢賢治

子ども

林檎園日記

久保栄

郵便夫

ガリレイの生涯 ブレヒト 修道士
海の五十二万石 広渡常敏 高木勘右衛門
母―おふくろ ブレヒト 門番
日本の気象 久保栄 男子技工士
夜の空を翔ける 広渡常敏 菅原圭介
山脈 木下順二 郵便配達
道路 アゴタ・クリストフ 狂人
シャイロック ウェスカー ユスク
荷(チム) 鄭福根 森賢太郎