東京演劇アンサンブル公演 チェーホフ生誕150年

原作/マクシム・ゴーリキー
改作/ペーター・シュタイン&ボートー・シュトラウス
翻訳・ドラマトゥルク/大塚直
演出/入江洋佑

この公演は終了いたしました。
たくさんのご来場、ありがとうございました。

 

装置/岡島茂夫
音楽/川本哲
照明/大鷲良一
衣裳/清野佳苗
宣伝美術/スズキコージ
舞台監督/熊谷宏平
舞台監督助手/入江龍太
演出助手/小森明子 ほか
制作/太田昭 小森明子

キャスト

セルゲーイ・バーソフ 弁護士、およそ40歳 ――――― 松下重人

…舞台となる別荘の借り主。汚い仕事もやり財を成した。現状に満足し、妻のヴァルヴァーラの不満が理解できない。

ヴァルヴァーラ その妻、27歳 ――――― 桑原 睦

…作家シャリーモフを白馬の王子のように崇拝していたが、実物に会い幻滅し、希望を失い鬱々とする。こんなのはほんものの生活ではないと嘆き、マーリヤとの出会いで家を出る決意をする。

カレーリヤ バーソフの妹、29歳  ――――― 清水優華

…絵を描き、自作の詩を朗読する、感覚の鋭い芸術家。しかし社会状況には無知で幼い。行き遅れのオールド・ミスと陰口を叩かれている。

ヴラース・チェルノフ ヴァルヴァーラの弟、25――――― 本多弘典

…バーソフの仕事を手伝っているが、現状の何にも満足していない。道化のようにふるまうが、マーリヤに恋をして、自分の生活を変える決意をする。

ピョートル・スースロフ 建築技師、42歳 ――――― 松本暁太郎

…社会変革に携わるマーリヤを目の敵にし、「俗物市民」の何が悪いと開き直る。奔放に遊びまわる妻ユーリヤへの嫉妬に焦がれて、酒に溺れる。

ユーリヤ その妻、30歳 ――――― 洪 美玉

…夫の目の前で愛人ザムイスロフといちゃつく美人。スースロフとは、破綻しながらも依存しあった夫婦関係。現実を見る視線は鋭いが、現実主義者で、快楽に逃避する。

キリール・ドゥダコーフ 医師、40歳 ――――― 浅井純彦

…公立病院に勤め、仕事に追われている。夫婦関係も家庭もうまくいっていない。社会改革のため少年保護院に出資したが、それもうまくいっていない。その鬱憤が時折ヒステリックに撒き散らされる。

オーリガ その妻、35歳 ――――― 奈須弘子

…こどもの世話の愚痴、夫との関係の愚痴を撒き散らしている。ヴァルヴァーラの生活に嫉妬し、ヒステリックに暴言を吐き、終いには友情は断絶する。

ヤーコフ・シャリーモフ 作家、40歳前後  ――――― 公家義徳

…バーソフの友人。人気作家だったが、いまは落ち目と噂されている。「作家たるものは…」という人びとの言動にうんざりしてこの避暑地にやってきたが、ここでもマーリヤに批判される。ヴァルヴァーラの想いを知って接近するが、互いに拒絶しあう。

パーヴェル・リューミン 32歳 ――――― 尾崎太郎

…いっときヴァルヴァーラと懇意にしていたが成就せず、再び接近するが拒絶される。以前は社会改革の夢を思い描いていたが、いまは厭世的で現実逃避型のロマンチスト。ピストル自殺未遂をおこす。

マーリヤ・リヴォーヴナ 女医、37歳 ――――― 原口久美子

…個人病院を経営し、社会変革に参加するシングル・マザー。彼女の言動はバーソフ、シャリーモフ、スースロフ、リューミンから嫌悪されるが、ヴァルヴァーラを目覚めさせる。15才年下のヴラースの情熱に心が揺らぐ。

ドッペルプンクト スースロフのおじ、55歳 ――――― 伊藤 克

…海外資本の参入で自分の工場を手放し、お金はあるが人生の目標がないという引退した実業家。甥のスースロフからは煙たがられ、皆からも老人扱いされるが、マーリヤの助言で、学校を創設する決意をする。

ザムイスロフ バーソフの代理人、28――――― 三木元太

…貧しいなかから這い上がってきたやり手の切れ者。バーソフの汚い仕事を手伝い、ユーリヤを愛人にし、この階級での地位を固めようとしている。素顔などみせない曲者。

サーシャ バーソフ家の子守女 ――――― 冨山小枝

…まるで小さいこどもにするように、なにからなにまでバーソフの世話を焼き、家事をまかなう。バーソフはどうしても彼女に勝てない。そしてヴァルヴァーラにはやるべき仕事がない。

プストバーイカ 別荘番  ――――― 竹口範顕

クロピールキン 別荘番  ――――― 三瓶裕史

…労働者の代表として登場し、彼らを揶揄する。


9/11土 12日 13月 14火 15水 16木 17金 18土 19日 20休
14:00
19:00

料金 当日=5,000円 前売一般4,500円 前売学生=3500円 ☆=ハーフチケットデー=2,500円
全席自由
前売 東京演劇アンサンブル事務所 TEL:-03-3920-5232 チケットぴあTEL:0570-02-9999 Pコード405-895

東京演劇アンサンブルwebチケット


ものがたり

弁護士バーソフが妻のヴァルヴァーラを伴って別荘に避暑に来ている。その地には建築家スースロフとユーリヤ夫妻、医師ドゥダコーフとオーリガ夫妻、バーソフの妹で芸術を愛好するカレーリヤ、バーソフにこき使われているヴァルヴァーラの弟ヴラース、人気作家のシャリーモフ、ヴァルヴァーラに思いを寄せるリューミン、女医のマーリヤ、スースロフのおじで引退した実業家のドッペルプンクト、バーソフの代理人でユーリヤの愛人ザムイスロフも滞在している。
 人気作家シャリーモフがやってきたことでヴァルヴァーラは動揺する。10代の頃一度詩の朗読会で出会ったシャリーモフは、人生の目的を持った大人だった。毅然とした態度に憧れて、ヴァルヴァーラはその作品に慰めと希望を見出して日々を過ごしていたのだった。そして、シャリーモフがいつかこんな自分を救い出してくれるかもしれないという儚い夢を抱いていた。しかしシャリーモフはヴァルヴァーラが思うよりもずっと通俗的な人間になっていた。待ち続けていたヴァルヴァーラは希望を失った。
 ヴァルヴァーラの目に現実が見え始めた。くだらないお喋りだらけの夫バーソフとそのあこぎな仕事、親しくしていたリューミンの現実逃避の情けなさ、愚痴だらけの友人オーリガ、そして自分を含めた人びとの目的もない怠惰な過ごし方など、今まで目を背けてきたあらゆることがあらわになり、まったく絶望する。
 そんな彼女に新しい生き方を提示したのがマーリヤだった。開業医として生きる女医のマーリヤの毅然とした態度にヴァルヴァーラは魅かれる。誰もが真実を知ることを求めるという原則的な彼女の態度は、バーソフやシャリーモフ、スースロフ、リューミンらを苛立たせる。彼らはナロードニキ運動の挫折を引きずり、絶望と現状肯定に埋没しているようだ。
 ヴァルヴァーラと同様に、生きている実感を持てないひねくれ者のヴラースは、やはりマーリヤに魅かれ、恋を打ち明ける。15才も年下の男性の告白に心を動かされるマーリヤだが、彼にここを脱して新しく生きることを薦める。
 一方世の中をうまく渡り歩いて来たバーソフには、聡明で一途なヴァルヴァーラの苦悩も憧れも理解することができない。財をなし、安定した豊かな暮らしの何に不満があるというのか……?  一方人気作家シャリーモフは、既に自分の読者でない層が出現してきていることを自覚し、社会的な発言を求めるマーリヤや世間にうんざりし、何を誰に向けて書いていいのかわからないとバーソフに告白するのだが……。
 ナロードニキ運動は挫折し、近代化も進まず、西洋に遅れをとり田舎者扱いされ、人々が沈滞しているロシア。ドイツの工場が進出してきて、その技術の差に勝ち目はないと感じたドッペルプンクトは自分の工場を売り払い大金を手にして引退した。その金をマーリヤの学校に賭ける決意をし、ドッペルプンクト、ヴァルヴァーラ、ヴラース、カレーリヤはマーリヤとともに出て行く。残される男たち。だが、果たして希望はどこにあるのだろうか。