ブレヒト生誕百年記念連続公演Ⅰ

肝っ玉おっ母とその子供たち この公演は終了しました。

1998年2月10日(火)~13日(金) ブレヒトの芝居小屋

1998年3月9日(月)~12日(木) 紀伊国屋サザンシアター

スタッフ

作・・・・・・・・・ベルトルト・ブレヒト

訳・・・・・・・・・千田是也

上演台本・・・・・・謝名元慶福

演出・・・・・・・・広渡常敏

音楽・・・・・・・・池辺晋一郎

装置・・・・・・・・岡島茂夫

照明・・・・・・・・大鷲良一

効果・・・・・・・・田村悳

衣裳・・・・・・・・加納豊美

宣伝美術・・・・・・インゴ・バウムガルデン

制作・・・・・・・・小森明子・太田昭

 

肝っ玉おっ母.................................羽鳥桂

兄息子.......................................公家義徳

弟息子.......................................久保修一

娘..........................................益井すお美

徴兵係.......................................村田光広

雑兵頭.......................................中村克己

料理人..........................................伊藤克

野戦隊長(織田方)..................田辺三岐夫

従軍僧.......................................入江洋佑

兵器係.......................................竹口範顕

絹代..........................................三浦潤子

雑兵頭(今川方)...........................本郷淳

繍帯の男....................................漆戸英司

侍大将(今川方)...........................竹尾勝彦

若い男.......................................中山直樹

百姓女.......................................奈須弘子

村長..........................................深山忠昭

農夫.............................................亀井攝

組頭..........................................松下重人

農夫..........................................浅井純彦

その妻....................................原口久美子

その倅.......................................熊谷宏平

 ■ものがたり

 時は戦国。
 下は上を侵し、東は西を襲う。
 通りには屍が積み上げられ、川は血に染められている。
 もう何十年も戦はつづき、いつ果てるともしれない。
 殺し尽くされ、焼き尽くされ、奪い尽くされた曠野のたちこめた濃い霧をやぶって、一台の大八車がゆっくりと進んでいる。
 戦場の兵士たちに、敵も味方もなく食べ物を売りさばき、三人のこどもを養っている女、肝っ玉おっ母と呼ばれている行商人の一家である。
 こどもを育て、こどもを守るために彼女にはその道しかない。
 「良いの悪いのってこっちゃねえ。王様は領地を兵隊は命を、あたしはチーズを売るだけさ。上も下も、右も左もみんな商売。戦争は商売さ」
 上の息子は勇敢。兵士になって掠奪に才能を示した。しかし、一瞬の平和の時に、その才能を発揮したために銃殺。「何故? おいらは同じことをしただけなのに。」
 次男は正直者。預かった軍の金庫をかかえて、敵軍の兵士に捕まっても「これはあんたたちのもんじゃねえ。」と頑固に主張したために処刑。
 未娘は優しかった。町の人たちに、「襲撃があるよ、殺されてしまうよ」と報らせようと、太鼓を叩きつづけて射殺された。
 みんな人間の美点があったばかりに、殺されてしまった。
 でも戦争は絶え間なくつづいている。
 肝っ玉おっ母は、今日も大八車を引いてあっちの陣地からこっちの陣地へと、商売に精をだしている。

 

 

上演にあたって

 『肝っ玉おっ母とその子供たち』は、ブレヒトの叙事詩的演劇の記念碑とされている名作です。
 東京演劇アンサンブルは、ブレヒト生誕百年を記念し、1998年年2月10日、彼の誕生日を初日として、以後二年間にわたって連続公演を企画しています。その第一弾が、世界の演劇史を変革した『肝っ玉おっ母とその子供たち』です。
 『肝っ玉おっ母とその子供たち』『セチュアンの善人』(1998年上演)
 『ガリレイの生涯』『コミューンの日々』『コーカサスの白墨の輪』
 これだけの大作・名作を上演するエネルギーは、自らの劇場を「ブレヒトの芝居小屋」とネーミングして、40年間ブレヒトを系統的に演じつづけてきた東京演劇アンサンブルにして初めて可能なことです。
 肝っ玉おっ母は、戦争を生活の糧にしています。息子を戦争にとられ、娘を戦争で殺されながらも、大八車をひきつづけます.一方で戦争を憎みつつ、一方で戦争が終わって放り出されることを恐れるおっ母。彼女の逞しさと、狡猾さ、悲哀が溢れでる作品です。戦争という絶望的な状況の中で、人間が一刻一刻をどう選択して生きていくのか、肝っ玉おっ母の中に、そんな人間の姿を見ることでしよう。
 20世紀の理想への試みは、無惨に崩壊しています。高度に発達した管理社会は人間の自由と尊厳を奪いとり、生の輝きも、濃密な人間の関係も、失われた夢となりつつあります。いま、人間の回復が叫ばれているとき、個を除いて最小の単位である家族への愛、東京演劇アンサンブルは、『肝っ玉おっ母とその子供たち』を従来の戦争の中に生きる一人の母親の悲劇としてでなく、混乱と殺戮の中に、ひたすら家族の幸福のために闘い、生き抜いた母親として描き出します。国家にも社会にも、民族にも絡めとられず、思想と生活の自立を求める物語としてこの『肝っ玉お っ母とその子供たち』を上演します。
 この連続公演の総合スタッフは、ブレヒトの現代における最も尖鋭な演出家と高い評価のある広渡常敏。流麗にして知的でドラマティッ夕な音楽を生み出し続ける第一人者、池辺晋一郎。上演台本は、沖縄を自己の原点として活動をつづける謝名元慶福。ブレヒトの舞台美術によって世界舞台美術プラハ・カドリエンナーレ銀賞受賞の岡島茂夫。九六年度照明家協会賞を東京演劇アンサンブルの『遠く天安門へ』で獲得した大鷲良一。ベテランにして軽快な音響の田村 。新進気鋭の衣裳加納豊美。現代の日本でのブレヒト作品上演の最高のラインナップで構成します。

 

  


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