広渡常敏追悼――――――――――東京演劇アンサンブル公演

生きている以上、「決してできない」なんてお言いでない!

しっかりしているものだって、しっかりしてはいない

いつまでも、いまのままではいない。

トゥエル生まれの革命家ペラーゲア・ウラーソワの生涯
公演舞台写真は、こちらです

おふくろ                                     
  ―マキシム・ゴーリキーの小説による

ベルトルト・ブレヒト/作 =入江洋佑/演出 林光/音楽

   

上演予定時間 2時間35分(休憩含む)

見たまえ/これが母親の行く道だ/その長い長い曲がりくねった道だ/見たまえ/まず息子の賃金が減った――もううまいスープを作ってやれない/そのうち争いにまきこまれ/息子を失うまいとして/心ならずも息子の賃下げ反対闘争を助けた/息子を闘争で失うのを絶えず恐れながら/息子にはたまにしか会えない/闘争が息子を連れていった/息子が死んだ/もう息子にこの世でいちばんすてきなスープを作ってやれなくなった/でもいまも/彼女は立っている/今もやはり母親だ/これまで以上に母親だ/多くの死んだ母のために/たたかう母のために/まだ生まれぬ母のために/大勢の息子や/娘たちに/侵略や搾取に反対する闘争の言葉を教えている。

2006年ブレヒト没後50年記念『ガリレイの生涯』『セチュアンの善人』で湯浅芳子賞受賞。

2006年ブレヒトの拠点劇場ベルリーナー・アンサンブルのブレヒト・フェスにて『ガリレイの生涯』の上演を果たした東京演劇アンサンブルの、現代を撃つブレヒト作品『母-おふくろ』。

主演ペラーゲア・ウラーソワに志賀澤子を配し、入江洋佑演出、東京演劇アンサンブル総出演でおくる。



5金

6土

7日

8祝

9火

10水

11木

12金

13土

14日

14:00

まもなく満席

まもなく満席

満席

19:00

満席



2007
10/5~14 ブレヒトの芝居小屋 全席自由

◆前売(一般)4,500円/前売(学生)3,500円/当日(同一料金)5,000


この公演は終了しました。沢山のご来場ありがとうございました。

 
作  ベルトルト・ブレヒト
 
訳  千田 是也
 
演出 入江 洋佑
 音楽  林光

■キャスト

ペラーゲア・ウラーソワ………………… 志賀澤子

パウェル…………………………………… 大多和民樹

アントン…………………………………… 浅井純彦

アンドレイ………………………………… 尾崎太郎 

イワン……………………………………… 松本暁太郎

マーシャ…………………………………… 原口久美子

巡査………………………………………… 三瓶裕史

警部………………………………………… 田辺三岐夫

門番………………………………………… 熊谷宏平

スミルギン………………………………… 伊藤克

カルポフ…………………………………… 漆戸英司

同僚………………………………………… 三木元太

労働者………………………………………

 竹口範顕 岩田安生 佐々木章夫 深山忠昭 松下重人 町田聡子
  樋口祐歌 久米美保代 三瓶裕史 冨山小枝 木戸真沙美 尾崎太郎
 
 熊谷宏平 田辺三岐夫  折林悠 樋口祐歌 上條珠理 深山忠昭
 
 松下重人 浅井純彦  原口久美子 洪美玉

守衛………………………………………… 松下重人

ニコライ…………………………………… 公家義徳

おかみさん………………………………… ささき未知

ジゴルスキー……………………………… 深山忠昭

その兄……………………………………… 竹口範顕

息子………………………………………… 熊谷宏平

伯父………………………………………… 三瓶裕史

伯母………………………………………… 洪美玉

その娘1…………………………………… 折林悠

2…………………………………… 久米美保代

3…………………………………… 木戸真紗美

監守………………………………………… 漆戸英司

イェゴール………………………………… 佐々木章夫

スト破り1………………………………… 岩田安生

2………………………………… 三木元太

ワシーリィ………………………………… 松下重人

女房………………………………………… 三由寛子

従業員………………………………………

 洪美玉 樋口祐歌 久米美保代 三瓶裕史 上條珠理  折林悠

家主夫人…………………………………… 真野季節

その姪……………………………………… 風吹可奈

貧乏なおかみさん………………………… 奈須弘子

医者………………………………………… 竹口範顕

女中………………………………………… 冨山小枝

合唱…………………………………………


■上演にあたって


広渡常敏追悼第二弾

ブレヒトの『母 おふくろ』は、千田是也の翻訳によって日本に紹介され、1960年劇団三期会(いまの東京演劇アンサンブル)によって初演した作品である。その後広渡常敏が演出して再演、全国での労演で公演した。初演時は60年安保闘争の真只中で、この公演の千秋楽の翌々日が樺美智子さんの殺された日である。共産主義革命の実現と安保打破を信じた人たちが上演し、それを信じた人たちがこの作品をある熱狂の中で見た。

では、現在はどうか。

ソ連の崩壊、中国の資本主義経済化、北朝鮮の独裁体制を見て、いま社会主義は多くの人の憧れを誘うものではなくなってしまった。しかし、マルクス主義とは何か? 貧しい労働者や農民たちが飛びついたこの思想の本当の姿とは何か? 今回、広渡常敏追悼の第二弾としてこの作品の現代的な意味をもう一度問い直すことで、広渡常敏が生涯をかけて追いつづけた理想と夢とが何であったのか、そして私たち自身にとって何であるのかを摑んでいきたいと考える。

 

ブレヒト・フェス―2006年ベルリン(湯浅芳子賞受賞)、2007年ミリャン

昨年、クラウス・パイマン氏率いるベルリーナー・アンサンブルからの招待を受け『ガリレイの生涯』を上演したのに次いで、今年はミリャン(韓国・釜山郊外)のフェスティバルにも、主催者イ・ユンテク氏より招待を受けた。『セチュアンの善人』の公演が行われる。

 

入江洋佑演出! 志賀澤子主演!

広渡常敏の死後、劇団代表を入江洋佑、志賀澤子が二人体制で引き継ぐことになった。

劇団の創立メンバーである入江洋佑は劇団を代表する俳優であり、今回は『國語元年』、『遠く天安門へ』に次いで、本公演では三作目の演出となる。自ら出演していた初演の『母―おふくろ』の当時と、現代の変わりように心を引き裂かれつつ、人びとの目覚めと発見と行動が社会を動かし得るのだということを、人間の未来形として入江は提示する。

 一方主演の志賀澤子は、やはり劇団を代表する女優であるとともに、海外公演のプロデューサーとしても力を発揮してきた。現在の『セチュアンの善人』も志賀が中心となって稽古場がつくられている。今年4月にはローザ・ルクセンブルク国際会議でローザの詩を朗読するという体験もした。ベルリン、ミリャンを経て、「労働者の寡婦であり労働者の母親である」ペラゲーヤ・ウラーソワで志賀がどのような姿を見せるのか。女であることにこだわりつづけて生きてきた志賀の「おふくろ」に注目が集まる。

 

「決してできぬ」が、「今日にもできる」にかわるのだ。

オール与党の選挙か? と思われる参議院選が終わった。ほんとうにこの国の政治家には未来のヴィジョンも思想もないのだなと痛感する日々。4月公演の『明日を紡ぐ娘たち』で娘たちは「当たり前のことが当たり前にとおるように」との思いで日々を生き、不当なものと闘っていた。搾取されることを当たり前と思っていたこの母は、息子を助けることからビラをまき、何が不当かを知り、それを動かそうと行動していく。スープにラードがひとかけらも入れられないのは、母のやりくりにかかっているのではなく、工場が労働者を使い捨てていることのせいだと知るのだ。私たちは、国の借金やアメリカの要求のために、いつまで騙され搾り取られるままに生きていくのか。教育も憲法もゆがめられるままにしていくのだろうか。

目を覚ます契機は、自分のとても身近なところにたくさん転がっている。愛する人を思うとき、そしてそれが自分だけではないと知るときに、コミュニズムの状態は生まれていくのだろう。そして知ることと声にすることは、きっと人間を美しくしていくに違いないのだ。



■ものがたり

ロシア革命前夜。

一人の母ペラゲーヤ・ウラーソワは、工場で働く息子のスープが水のようなことを気に病んでいる。工場では更なる賃下げの通達が出ている。息子パーヴェルは、仲間たちとビラを刷りはじめる。母は息子の身を案じて小言を言う。その時警察が彼女の家に踏み込んでくる。カーテンを引きちぎり、ラード壷を割り、ソファを引き裂き、隠したビラを探す。前日にビラを配った仲間は逮捕された。今日もビラを配らなければ、仲間は返してもらえないだろう。当番はパーヴェル。母は息子を守るために自分がビラをまくと申し出る。

 

昼休みの工場で、きゅうりや饅頭をビラに包んで売った。労働者の代表は、工場に言いくるめられて賃下げに応じてしまった。このビラにはストライキの呼びかけが刷ってあったのだ。労働者はストライキを決議する。

 

メーデー。。母は若い人たちと一緒に街頭に立つ。一人で抗議してもムダ。けれど人びとが集まって交渉すれば、それはかなうかもしれない。そしてそこに警察が関わる筋合いはないはずだ。しかし赤旗を持っていた年取った労働者のスミルギンが警察に撃たれた。母は、その手から赤旗を持って立った。

 

息子は逮捕され、母は仲間のイワンの兄、教師ニコライの家政婦となった。台所で彼女は失業者ジゴルスキーらとメーデーの話をしている。ニコライはこの家に政治を持ち込むなと叱るが、母は字を知りたいから教えてくれと頼む。ニコライは「木、草、花」から始めようとするが、母たちは「産業労働者」や「搾取」という字を知りたがる。…何ヶ月かが過ぎ、ニコライの家を訪れたイワンは、母が字を覚え、ニコライがマルクス主義について語るのを聞く。あやうく兄を見間違うところだった。

 

母は収監されているパーヴェルに会いに行き、農民の活動家の名前を聞き出す。そして母はストライキが行われている農場へ訪ねていく。料理場ではスト破りが食事している。母は料理人ワシーリィとお喋りを始める。スト破りには石を投げても構わない、スト破りと同じ食事はいらない、ときっぱり言う母に、ワシーリィは動かされる。そして従業員を集めて自分たちもストに入ることを宣言する。

 

何年か経ち、パーヴェルがやっと帰ってきた。ニコライの家には印刷機が持ち込まれ、ビラを刷っている。すぐに国境を越えなければならないパーヴェルに、母はパンを切ってやることもできない。しかし、二人は既に同じ言葉を持っていた。最初にビラを刷っていたあの日とは違うのだ。母と子、だけでない、仲間、という関係が二人をもっと親密に結びつけていた。

 

パーヴェルは国境近くで捕らえられ銃殺された。同じ労働者の作った壁の前で、同じ労働者の作った弾で。

母の悲しみを癒そうと家主夫人が聖書を持ってやってきた。神への祈りが足りないからこんなことになるんだという家主夫人に、信仰で現実を覆い隠す愚かさを説く。彼女たちが去って、力尽きてそっと呟く。パーヴェル!

 

息子の死に悲しみ病の床についてしまった母。その間に戦争が起こった。反動がおこり労働者は挫折し望みを失っている。母はまた立ち上がる。そして戦争にむかう兵士を送る群衆のなか、「戦争反対」を叫んで殴られ、血だらけになった。母は助け起こす労働者にビラを配ろうとするが拒否される。たった一人近づいてきた女中がいた。どうしたらいいの? と問う彼女に母は言う。「ひとりでは何もできはしない」けれど、「生きている以上、決してできないなんて言ってはいけない! 決してできないなんて、誰が言えよう? 「決してできぬ」が「今日にもできる」にかわるのだ」と。

 

*12場一部~14場一部までカット


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