
『泥棒たち』
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東京演劇アンサンブル公演
泥棒たち
作=デーア・ローアー 訳=三輪玲子 演出=公家義徳
論創社刊『泥棒たち/黒い湖のほとりで』より
●2017年9月8日(金)〜18日(月・祝) ●ブレヒトの芝居小屋(西武新宿線・武蔵関)
開演 | 8金 | 9土 | 10日 | 11月 | 12火 | 13水 | 14木 | 15金 | 16土 | 17日 | 18祝 |
14:00 | ― | ●* | ● | ― | ― | ― | ― | ― | ● | ● | ● |
19:00 | ● | ― | ― | ― | ★ | ★ | ● | ● | ― | ― | ― |
*はアフタートーク/★はLow Price Day 2500円
都市周辺部に暮らす12人の男女の物語。
無用の長物である〝トマソン〟(赤瀬川原平) 姓の2家族を中心に描かれる悲喜劇。
リンダは家族が欲しいが恋人もなく、独り家族ごっこを続ける日々。
兄弟のフィンは自室に引きこもったまま外界との連絡を絶った。
老人介護施設にいる父エルヴィンは家に帰りたいが家庭は崩壊。
モニカは家庭よりもキャリアを望み、無為な夫トーマスとの結婚は破綻しつつある。
ミラは恋人との間にこどもを授かったが産むことをためらい、
その恋人ヨーゼフは自分の子を産ませるためにミラの問題を解決しようとする。
ガービは守ってあげたい恋人ライナーに騙され殺されそうになり、
イーラは43年前に失踪した夫が恋しくなる。
そしてシュミット夫妻は若い頃の小遣い稼ぎの精子の提供をいま後悔している。
――12人の人物の人生が時に交差し、巻き込み巻き込まれながら、
なんともいえない結末を迎える。
現代のわたしたちの物語。
上演意図 何故いま日本でやるのか?
本作は2010年にアンドレアス・クリーゲンブルク演出で初演し、テアター・トレッフェン(ドイツ語圏演劇のその年の初演ベスト10作品)に選ばれ、大ヒットした作品。ちょうどローアー氏が『泥棒たち』を執筆中の2009年、『タトゥー』日本初演の際に初来日した。その影響か、本作の主人公二人の姓は「超芸術トマソン」からとった〝トマソン〟である。過去にはなんらかの意味があったのだろうが、いまはその目的も失われ、ただ放置されている遺物に赤瀬川原平が名づけたもの。(巨人に来た助っ人外国人トマソンがほぼ役に立たなかったことから命名)。〝トマソン〟と、フィンが向かう〝壁〟、これらが作品の象徴的なモチーフとなっている。
作中、父トマソンから「戦え戦え」と教育された息子フィン(終)が自殺する。過去の遺物の呪縛によって若者は企業戦士となり、過労、委縮、目的も見失って停止、フリーズ、自殺。一方モニカのような雇われ店長が簡単にクビを切られることは既に日本の常態となり、リンダの勤めているような地方の遊興施設は廃墟と化しているところも多い。地方の公共交通機関の廃線は夥しく、企業の統合・合併による従業員解雇も驚く事態ではなくなった。
このようなグローバルな企業の経済競争のなかで簡単に捨てられる人びとの姿が描かれる一方、老人介護施設で生きる老人の苦痛、不妊に苦しむ親への最後の光明ともいえる精子バンクが、生まれた子ども自身を苛む現実も描いている。
ドイツの現実は日本の現実と地続き。アメリカ、EU始め、20世紀から引き継がれてきた社会民主的な行政が崩壊し、国家を越えた共同体に亀裂が走っているいま、世界的に同じことが進行中だ。
このような社会を、そこでじたばたする人びとを、時に笑いながら、時に涙しながら、ハタと自分に重ねてドキッとする、そんな舞台が観客の共感を呼ぶだろう。そして気がつく、このような世界は、わたしたち自身の本質そのものが反映されて作られていることに。
公家義徳演出
ブレヒトを俳優として演じることで育ち、『忘却のキス』(シュトラウス)、『無実』(ローアー)、『最後の審判の日』(ホルヴァート)とドイツ演劇の演出に挑みつづけてきた公家義徳の、2作目のローアー演出である。今回は国広和毅さんを音楽に迎えた初めての顔合わせ。全37場中のほとんどが二人ずつで演じられ、その組み合わせが変わりながらすべてが絡まっていくさまを、動く装置(池田ともゆき)で見せることになるだろう。
『無実』の舞台はローアー氏に非常に好感を持たれ、今回の来日も非常に楽しみにしてくれている。テキストを大切にするTEEならではの舞台で、観客に楽しんでもらいながら自身と社会をみつめる、そんな切ないコメディをめざす。
音楽 国広和毅
舞台美術 池田ともゆき
衣裳 稲村朋子
照明 真壁知恵子
音響 島猛
舞台監督 永濱渉
舞台監督助手 入江龍太
宣伝美術 久保貴之 奥秋圭
制作 小森明子 太田昭
●キャスト
フィン・トマソン 和田 響き 保険の外交員
リンダ・トマソン 奈須 弘子 フィンの姉(妹)
エルヴィン・トマソン 伊藤 克 フィンとリンダの父親
トーマス・トマソン 雨宮 大夢 警察官 フィン・トマソンの一家と親戚関係はない
モニカ・トマソン 町田 聡子 その妻 スーパーの店長
シュミット氏(ゲルハルト) 浅井 純彦 医師
シュミット夫人(イーダ) 真野 季節 その妻
ヨーゼフ・エアバルメン 竹口 範顕 葬儀屋
ミラ・ハルベ 正木ひかり その恋人 古着屋の従業員・未成年
ガービ・ノヴォトニー 洪 美玉 古着屋店主
ライナー・マハチェク 大橋隆一郎 その恋人 スポーツ用品のセールスマン
イーラ・ダヴィドフ 志賀 澤子 歌手