チェーホフ「かもめ」の上演

東京演劇アンサンブルは、故・広渡常敏と故・入江洋佑の強い意志によって、1954年創設されました。社会変革は個々人の心のなかに変革が起こることによって進むと確信し、演劇によってそれを実現しようとしてきました。演じる側も同様で、「集団のなかでこそ人間が変化する可能性がある」として劇団制を貫き、ブレヒト等社会派の作品に取り組みながら、共に育ち力をつけてきました。現代社会の矛盾を突き、マイノリティに寄り添いながら社会に一石を投じる演劇を作り、それが人の心を揺り動かすことこそが、わたしたちが演劇活動を続ける理由になります。創作・書下ろしも加えつつ、世界で何が起き、何をみつめているのかに敏感に、翻訳劇を中心に新作を作りつづけています。また1967年以降、子どもたちの文化芸術体験の充実を図るため、義務教育外にあってフォローされていない高校生のための演劇鑑賞に情熱を注いでいます。

2019年7月より、「ブレヒトの芝居小屋」から埼玉県新座市の新しい稽古場「野火止RAUM」に居を移しました。時を同じくして代表だった入江洋佑も亡くなり、劇団は新体制に入りました。学校公演を主な財政ベースにしつつ、「野火止RAUM」で若い俳優たちを中心に新機軸を打ち出していく。この5年間は、新稽古場をいかに人の集まる場にできるか、地域と結びついたイベントづくりなども含めて、拠点づくりが大きな仕事となります。研究者や市民運動と連携しながら、文化の交差する場として、東京のベッドタウン新座に新しい「座」を創ることを目指しています。

『クラカチット』(作:カレル・チャペック 演出;小森明子)2019年3月

東京演劇アンサンブル こどもの劇場について
1960年代から、東京演劇アンサンブルは全国各地の子ども劇場・おやこ劇場や、学校における芸術鑑賞教室などで公演を続け、多くの人と感動と発見を共有してきました。しかし現在、目まぐるしく変わっていく時代の波に押され、その機会はどんどん失われつつあります。人間から“ものがたる力”を奪うような近代の社会構造の中で、芸術や文化が絶対に欠くことのできないものであるということをいま一度、生の舞台を通してもっとたくさんの人達と感じあいたいと願ってやみません。

子どもにおもねることなく、上質な舞台芸術を届けます。子どもたちにはとっても楽しく、贅沢な時間を過ごしてほしい。また、凛とした思いで、子どもたちに向き合う大人の姿を舞台で見てほしいと思います。

『おじいちゃんの口笛』(作:ウルフ・スタルク 脚本:広渡常敏 演出:三木元太)2020年9月