彼女たちの断片
石原燃 書き下ろし新作
演出=小森明子
kanojo_ol-01 kanojo_ol-02公演日程
2022年3月23日(水)~3月27日(日)
渋谷区文化総合センター大和田・伝承ホール
地下鉄渋谷駅から伝承ホールへの写真による道案内
JR渋谷駅西口から伝承ホールへの写真による道案内
JR渋谷駅中央改札・銀座線から伝承ホールへの道案内
井の頭線渋谷駅から伝承ホールへの道案内
全席自由/チケット発売順に整理番号発行・整理番号順の入場
料金:前売一般/3800円 前売U30/3000円
★=Low Price Day/2500円
ペアチケット/6000円(2枚セット)
当日/4500円
アフタートークのおしらせ
聞き手:石原燃さん
3月24日(木)14時公演終了後
三宅玲子さん(ノンフィクションライター)
3月25日(金)14時公演終了後
長田杏奈さん(美容ライター)
3月26日(土)14時公演終了後
田中雅子さん(上智大学総合グローバル学部教授)
助成:文化庁舞台芸術創造活動活性化事業
協賛:ケンタウルスの会 (TEE友の会)
当日券につきましては、劇団Facebookページ、Twitterにてお知らせします。
音楽/国広和毅
舞台美術/香坂奈奈
衣裳/稲村朋子
照明/真壁知恵子
音響/川崎理沙・島猛
映像/三木元太
宣伝美術/ Judith Clay・奥秋圭
舞台監督/浅井純彦
演出助手/黒川アンナ
制作/太田昭
制作助手/志賀澤子
登場人物
静谷晶(44)グラフィックデザイナー
洪美玉
天野ゆき(44)グラフィックデザイナー
原口久美子
高崎涼(35)グラフィックデザイナー
山﨑智子
静谷葉子(70)日仏翻訳者 晶の母
志賀澤子
天野みちる(20)大学生 天野の娘
永野愛理
多部真紀(20)大学生 みちるの友だち
仙石貴久江
水越まゆみ(52)喫茶店店員 葉子の友だち
奈須弘子
あらすじ
大学生の多部が望まない妊娠をしてしまった。
友人みちるに相談して、海外の支援団体から「中絶薬」を送ってもらって中絶することにした。みちるの母の同僚である涼にカードを借りて送金し、薬は届いた。中絶薬は二種類、2日間かけて飲む。海外では広く普及している薬だが、日本ではやっと承認申請するところだ。(2021/12/22申請)。安全な場所は? と考えた末、やはり母の同僚の晶に頼んで泊めてもらうことにした。
この物語は2日目の薬を飲む一夜を描く。
みちるの行動に不信を覚えた母・天野が、晶の家に乗り込んでくる。行動的なみちるだが、母親とはあまり口をきかず、わだかまりを抱えていた。みちるの妊娠を疑った天野に、多部が、自分が妊娠したのだと告げる。
一方、晶の母・葉子の友達で、総菜の宅配をしているまゆみも定期便を持参した。この7人の女たちが、中絶の一夜を過ごすことになる。
中絶薬のこと、日本の医療のこと、生殖をコントロールする国家、その歴史などが語られる一方、7人のそれぞれが抱えてきたこと…妊娠、中絶、性、レイプ、家父長制、優生思想等が、モノローグや一対一の会話、更にみんなとのお喋りのなかで語られる。
多部は、6人の大人たちによって守られるなかで、無事に終えることができた。
7人の女たちは、それぞれ、この一夜の経験を持ち帰っていく…。
上演予定時間 2時間10分(休憩なし)
制作意図
2017年10月にアメリカで始まった #MeToo 運動は、日本においても同月の伊藤詩織さんの性暴力の告発、翌年の財務省事務次官のセクハラによる辞任などの形で広がった。韓国のフェミニズム小説『82年生まれ、キム・ジヨン』の日本語訳(筑摩書房)は現在までに20万部以上が売れており、今や日本でもフェミニズムが根付いたようにも思われる。
一方で、中絶についてはいまだタブー視され、議論が進んでいない。日本では、明治時代に制定された刑法212-216条の堕胎罪が継続しており、世界203カ国中11カ国しか必要とされない中絶における配偶者同意の法的規定が存在する。2021年には、公園のトイレで出産した子を遺棄した愛知県の看護学生(当時)が逮捕されたが、同意のサインが得られずに中絶できなかったことが報道された。
また日本では中絶手術そのものも、WHOが「安全でない」と指摘する旧式の手術法(掻爬術)が主流で、中絶薬も認可されていない。2021年末にはようやく経口中絶薬の承認申請が出されたものの、産婦人科医会が薬の処方にかかる費用を10万円程度にするよう求めるなど(原価平均は770円)、ハードルは高いままだ。
今回、この中絶というテーマに、東京演劇アンサンブルが7人のオール女性キャストと共に挑む。本作を書き下ろしたのは、2020年に『赤い砂を蹴る』で芥川賞にノミネートされ、日本軍性奴隷や男性の性暴力被害者などのテーマに、多数の社会派リアリズム戯曲を発表してきた石原燃だ。性暴力根絶を目指し、2019年に始まったフラワーデモで自身の経験を話す多くの勇気を持った女性たちを目にし、その姿に着想を得た本作は、こんな一言で始まる。「私、中絶したことがあります。」
自分の体を生きるとはどういうことなのか? 女性の身体は、いつの時代も国家や権力による支配を受けてきた。女性が自分の身体をコントロールできるようになることは、一人の人間として生きていくために不可欠なことだ。一方で、思い通りにならない体を、ありのまま受け入れないといけないこともある……。これまで古典・新作含め数多くの作品に出演し、実力を兼ね備えた7人の女性俳優たちは、石原が描く、未承認の中絶薬を使った中絶を試みる大学生や、彼女を取り囲む、年代・中絶経験の有無・性的指向などが異なるリアルな女性たちの姿を体現する。
本作の演出を担当する小森明子は、これまでに、不況の中で一人たたかう女性を描いた、ブレヒト作「屠畜場の聖ヨハンナ」、新型原子爆弾の開発をめぐるカレル・チャペック作品を大胆に戯曲化した「クラカチット」などを手掛け、社会における不合理や問題に自分の立場から立ち向かう人間たちを丁寧に描いてきた。7人の女性たちが、時に言い争い、そして励ましあいながら一人の中絶を見守る本作。観客もその会話の輪の中に入り、自分の経験・意見を話したくなるような温かい場が立ち上がる。
『彼女たちの断片』上演にあたって
劇団代表 志賀澤子
2022年東京演劇団アンサンブルは、今注目の石原燃書き下ろし『彼女たちの断片』から始まります。演出は粘り強く表現の可能性を追求し続ける小森明子。
渋谷の伝承ホールの小劇場空間で、これまで正面から語られことがなかった、女性の妊娠・中絶についての女たちの物語です。
作者の石原燃は、既に『夢をみる』『はっさく』『白い花を隠す』などの戯曲がさまざまな賞を受け、上演もされていますが、2021年には、初の小説『赤い砂を蹴る』が芥川賞候補になり今、更に注目を集めている劇作家であり、小説家です。
2021年12月には『蘇る魚たち』が上演され、男性の性被害について鋭く切り込んだ世界は、観客に衝撃を与えました。
『彼女たちの断片』は前作の対極とも言える内容、女性の性、具体的には‘中絶‘の行為が中心に描かれている戯曲です。そして戯曲の手法としても対極的と言えるでしょう。
東京演劇アンサンブルは1954年創立しましたが、東京練馬区関町の “ブレヒトの芝居小屋“ での1977年−2019年は、演出家広渡常敏を中心とする現代演劇の実験の場所でした。ブレヒトを中心とする海外作品や、久保栄・木下順二などの日本創作劇、そして、広渡の書き下ろし、脚色など、現代社会の矛盾や、変革の思想の中に生きる人間の問題を描く戯曲を、客観的で独自な表現を探りながら上演してきました。それが劇団の演劇論と、スタイルを創ってきました。
そして現在、埼玉県の“野火止RAUM“に本拠地を移した直後、コロナ禍の中での演劇活動という、厳しい状況となり、改めて劇団が生きていく意味を問われ、俳優たちも自らが求める演劇を考える時間を過ごしていると言えます。
戯曲書き下ろしを依頼した時、石原燃さんには今一番書きたいと思うことを書いて下さいと伝えただけで、劇団はひたすら初稿を待っていました。どんなことを、どのようなスタイルを想って書いてくれるだろう?と。
ブレヒトの上演とともにその演劇論を探って実践したり、それに立ち向かったり、乗り越えたり、そんな劇団とどのようなテーマの、どんな芝居創りを望んでくれるか?高まる期待の中でついに『彼女たちの断片』が生まれました! それは今渦中の問題、日本で飲む中絶薬の承認申請がようやく行われる中での、女性の物語でした。
演出の小森明子は、作者と同世代。『屠畜場の聖ヨハンナ』『ビーダーマンと放火犯たち』『クラカチット』などの演出家として、新しいスタッフの力を借りて、未知の表現の可能性を、俳優との共同作業の中で創りあげてきました。今回『彼女たちの断片』で初めての、現代日本の劇作家との、女性の性、妊娠、中絶についての格闘は、彼女の持ち味の粘り強さが、鮮やかな花を咲かせることでしょう。
日本社会の根源にある家父長制に、どの道からもいき着く現在。正面からそのディテルを語り、立ち向かう。その言葉を放つ動機を自らの中に持ちうるか? 女優たちは作者からの挑戦を受けて毎日の稽古場に通っています。
この10年の間に入団して、既に活躍している、仙石貴久江・山崎智子・永野愛理の第3世代、油の乗り切ったエネルギーに溢れた第2世代、洪美玉・奈須弘子・原口久美子。そして既に入団50年を超えている第1世代の志賀澤子。男優たちは、舞台監督、映像、演出助手として関わっています。稽古場ではかつて交わされたことのない会話、女性でありながら知らなかったこと、あえてきかなかったことが言葉にされ、それぞれの世代が、今ネットを追っていけばいくらでも出てくる情報の一つ一つに唖然としています。
溢れる情報が、演劇になるのか、それを口にする役者の存在が演劇なのか?
石原燃の、東京演劇アンサンブルの女優たちへの、そしてこの時代を生きるあらゆる性、あらゆる状況に生きる人間たちへの、挑戦を、問いかけを受け止めてください。
音楽=国広和毅、舞台美術=香坂奈奈、衣装=稲村朋子、照明=真壁知惠子。
野火止RAUMの空間に集うスタッフ、新風を巻き起す仲間たちで創り上げる舞台、渋谷伝承ホールでお待ちしています。ご期待ください。
東京以外での公演はありますか?
落合桂子様
お問い合わせありがとうございます。
東京以外での公演はございません。
ぜひ、東京公演にご来場いただければと思います。
3月23日(水)の19時の公演のペアチケットを希望しています。ペアチケットは劇団事務所でのみ受付とのことでWEB申し込みはできず、
先ほど劇団事務所に電話してみました。「048-423-2521」にかけました。留守電になり繋がりませんでした。
どうしたらいいでしょうか?ご連絡ください。(2022.2.9/ 18:10)
鈴木みゆき様
大変ご迷惑をおかけしております。
劇団事務所は、平日11時~18時にお電話いただくか、
ticket@tee.co.jp
までお申込みいただけますでしょうか。
上のチラシで蘇る魚たち の上映年が1921年に間違えられています。訂正してねー。
以下参照。
1921年12月には『蘇る魚たち』が上演され、男性の性被害について鋭く切り込んだ世界は、観客に衝撃を与えました。
『彼女たちの断片』は前作の対極とも言える内容、女性の性、具体的には‘中絶‘の行為が中心に描かれている戯曲です。そして戯曲の手法としても対極的と言えるでしょう。
ここ一年くらい、ジェンダーとか叫ばれてきた。ことこの望まない妊娠では、掻爬法や、中絶を巡る、当の女性に不利な状況がそのまま継続されてきた。されてきたというより、掻爬法など、継続させてきた。日本の男尊女卑の根深さに驚かされる。